アナリストに「仕事の大半の時間は何をしているか」と聞くと、口を揃えて「分析する価値のない修正作業をしている」と言います。「役割とは異なる業務に時間を取られている」と回答したデータワーカーは、92%に上ります。データチームは、自身が作成した「データからダッシュボードへ」のデリケートなパイプラインの維持に多くの時間を費やし、実際にデータを分析する時間は50%しかありません。別の見方をすると、データチームの人件費の50%が、分析ではなく修正作業に浪費されていることになります。よく考えてみましょう。どの企業にとっても人材が最大の支出と投資であるなら、ダッシュボードはその半分を無駄にしています。
間接的な業務がこれほど多ければ、データチームには真のイノベーションに費やす時間もエネルギーもほとんど残りません。実際に、データチームの実に68%が、「収益増加のアイデアを実践するだけの十分な時間がない」と回答しています。その理由は、データチームの本来の役割から外れた業務に時間を浪費しているためです。
1. 断片的なツールが断片的なインサイトを生む
貴社のチームが最近作成したダッシュボードや、自身が最近利用したダッシュボードについて少し考えてみてください。わかりやすく簡潔で、最適なインサイトが得られるシステムでしたか。それとも、連携性と一貫性のないテクノロジーの寄せ集めで、ダウンストリームの各ポイントが次のポイントの実行可能性に依存するようなシステムでしたか。BIは、この20年間ずっと後者でした。ダッシュボードによって、データチームは「これはデータからインサイトを得るサプライチェーンとして許容範囲内」と画一的に考えるようになりました。そのせいでむしろ、ダッシュボードを利用しても企業の収益には有意義な効果がなく、人件費の高いデータチームがシステムの管理と運用をせざるを得なくなりました。この状態を破綻または非効率的と感じるのは無理もありません。それでも多くのデータチームは、未だこの流れの中に閉じ込められています。
これは、1つの部署で1つのダッシュボードツールを維持管理することに伴う運用コストの一例です。これを新しい部署に展開しようとすると、まったく新しいパブリッシングパイプラインを立ち上げなければなりません。つまり、データウェアハウスの外でより多くのサーバーとより多くのデータの改造が必要になります。しかも、ほとんどの組織では、データワーカーの好みに応じて、少なくとも3つのダッシュボードツールを使い分けています。これらのツールは、ただでさえ肥大化したインフラをさらに肥大化させ、一貫性のない回答を生み出し、セキュリティやガバナンスの問題を深刻化させ、ビジネスユーザーはセルフサービスでインサイトを得るためにツールからツールへ跳び回らなければなりません。
インサイトツールやデータに対するこの断片的なアプローチは、ビジネスの成功率の低下に直結します。データとアナリティクスは、組織に競争上の優位性をもたらす鍵であると言われてきましたが、ビジネスユーザーにとって断片的なインサイトは逆の結果を生むだけです。ビジネスユーザーにインサイトを提供するために、単一の共通したツールと手法を標準化した組織の80%がビジネス目標を上回ったと報告している事実ほど、このことを明確に示しているものはありません。
2.動的なデータと静的なダッシュボードの緊張関係
データは静的なオブジェクトではありません。データは絶えず変化し、増減したり左右に傾いたり、収集すればするほど積み重なったりします。これに対し、ダッシュボードは静的で変化しません。ダッシュボードは、ある時点の状態を捉えて見やすく表示した後、そのデータをいつもの棚に置きますが、再び参照されることはありません。一方、データの賞味期限はますます短くなっており、ほんの数時間で古くなってしまうケースもあります。
今日のアナリストは、インサイトの作成に使用するデータの86%は古く、その半分近くは2か月以上前のデータだと報告しています。つまり、ビジネスユーザーは大抵、現状とは異なる古いデータに基づいて100万ドル規模の意思決定を行っている場合が多いのです。
しかし、常に変化しているのはデータポイント自体だけではありません。データの基本スキームも変化しており、パブリッシングパイプラインを壊さずにダッシュボードで単に処理することは不可能です。
現代の世界では、新しいデータソースの大量発生についていくためにデータスキーマが頻繁に変更されます。どれくらいの頻度で変更されるのでしょうか。平均して60%のデータスキーマが少なくとも毎月変更されると見積もる調査もあります。スキーマが変更されるたびに、列名の単純な変更でさえ、ダッシュボードのダウンストリームを壊してしまう可能性があります。そうなると、データチームは何時間もかけてエラーログを調べ、壊れたインサイトを修正するために問題の発生場所を過去に遡って解明しなければなりません。
3.ダッシュボードはデータを闇に葬る
現代のデータチームはダッシュボードを使ってインサイトを鮮やかに見せようと奮闘していますが、このような時代遅れのソリューションでは問題解決の手掛かりにはならず、しかも昨今のデータ量には間違いなく対応できません。その証拠に、多くの企業は、データウェアハウスに保存された何十億行ものデータを十分に、あるいはまったく活用せずにビジネスをしています。
調査では、これが真実であることが何度も証明されています。実際に、最新の予測では、企業の全データのうち50%以上が利用されていないといいます。その上、データリーダーの66%が「社内のデータの半分以上がダークデータ(未使用、不明、活用していないデータなど)」と回答し、57%が「データ量が増える速さに自社がついていけない」と回答しています。その結果、47%が「データ量の急増に直面すれば自社は後れを取るだろう」と認め、5人中4人のデータリーダーが「ダークデータを利用する上でデータ量が一番の課題」と回答しています。
たいへん懸念される数字です。企業が成功するには、収益向上のために社内のあらゆるデータを活用する必要があります。現に、ダークデータの運用している企業では、年間収益が平均5.32%増加し、一方、年間運用コストは平均4.85%減少しています。
4.ダッシュボードでは今日の仕事のやり方に追いつかない
従来のダッシュボードでは、チームが求めるスピードとグローバル規模で一貫性と信頼性の高いインサイトを提供することはできません。なぜなら、ダッシュボードには以下の点が欠けているためです。
コラボレーションの機会:デスクトップダッシュボードの開発はサイロ状態で行われるため、アナリストのコラボレーションが妨げられてしまいます。
発見と再利用のしやすさ:連携しないパブリッシングサーバーが複数あり、それぞれが個別に管理され、さらにアクセスと権限の制御も異なると、分析上の無駄や間接的な業務が大量に生まれてしまいます。種類の異なるダッシュボードとサーバーの海に情報が埋もれ、アナリストは収益につながらない業務に貴重な時間を取られてしまいます
安全性の高いリモートデータとインサイトへのアクセス:複雑なパイプラインとデスクトップ開発のせいで、データガバナンスとセキュリティーの担当チームにアクセス制御の管理負担が重くのしかかっています。
ワンタッチのインサイトプロビジョニングによる迅速なユースケース開発:新しいユースケースを開発する際は、ビジネス要件の収集、データモデルの作成、ガバナンスとセキュリティを検証した上での開発に何か月も要し、コンプライアンス、データ更新、パブリッシングに伴う作業負担は大変なものになります。
このような制限があると、データドリブンな変革プランを全社規模で立てたとしても、実現するのは不可能です。むしろ、変化は少しずつしか起こらず、ビジネスの価値はほとんど感じられません。
データの価値を最大に
新しいデジタルランドスケープで成功するためには、すべてのデータに光を当てることができるソリューションで、リアルタイムなインサイトに基づいてリアルタイムなアクションを起こす必要があります。ダッシュボードが役割を果たせないなら、より良い方法を見つけるしかありません。